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リップクリーム [詩]


ポッケに忍ばせた。
リップクリーム
色は付かないはずだけど、
甘い匂い、眉をひそめるほど。
薄桃色の蝋燭。
リップクリーム。

昔、三面鏡の引き出しの、
隅っこで眠る口紅があった。
化粧が苦手な母さんが、
唯一持ってた口紅。

三面鏡すらなくなって、
口紅なんて忘れた母さん。
そんなのなくたって、
話して、歌って、食べて、口付けて、
口紅がなくなっても。

ポッケに忍ばせた
リップクリーム。
あと数年も経ったなら、
薄桃色が濃くなるのかな。
紅く紅く、記憶の隅の
三面鏡の引き出しの匂い。

(ならば私は、大人にならずに
きっと大人になりたいと思う)
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